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千里の怪我は木刀で脚払いをされたらしい青痣が脛に出来ていた程度で、骨や筋には異常はなかった。
「丈夫な脚だ・・・」
包帯を巻きながら折角なので脚線を観賞。
次は・・・と、視線を上げる。
開いた首筋から胸元にかけ噛み付かれたような痕が数箇所・・・。
「痛!」
小刻みに震えて、両手で顔を覆って耐えていた千里だが、痛みに思わず様子を見た。
「ぎゃあああ!な、なにをする!」
「何って・・・汚れを吸い出しただけだ」
ガバッと起き上がり千里は顔を真っ赤にして、ただ口をパクパクさせている。
「今日は俺のことだけ覚えていればいい。ああ、そうだ」
駿は懐から箱を取り出し中のものを手に、乱れた千里の髪を梳く。
耳元に唇を寄せ、何事かを囁くと、箱に戻した櫛を手渡して駿は部屋を後にした。
突然の嵐に混乱し茫然とした千里だけを置き去りに。
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