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信頼・・・・・・そう、信頼を紫苑は持ってくれたのだ。
なら、それ相応の成果を見せなければならない。
礼春は舞可にニコリ、と笑って見せた。
しかし、間違っていたのだろうか。
礼春の顔を見た舞可が焦って顔を背けてしまった。
(こっちは難しいな。人がする表情の頃合いと意味合いがイマイチ理解できん)
笑顔が苦笑いに移行した礼春に、今度は九太郎が足並みを揃えてくる。
「ちょっと良えか?」
「ん、何だ?」
どこか遠慮勝ちな様子で後ろへ移動した九太郎の両手が伸びてくる。
ムギュ!と九太郎は突然礼春の両耳を引っ張り始めた。
「ふぎゃ!
な、なななな何をするんだこの電球頭ぁ!」
長身の九太郎を背中越しに見上げる礼春が、不適に笑むその顔に威嚇を放つ。
「ほんまにくっついとんのやな。自分みたいな人間臭い妖魔見んの初めてやから、つい好奇心に火ぃ点いてしもたんや」
手を振り払う様に離れ、礼春は九太郎から距離をとった。
「好奇心とは何だ!
突然我の耳を触りよって!」
「良えやんけ減るもんやないし。それに一応仲間なんやからスキンシップくらい大目に見いや」
「お前は!全く・・・・・・本当に」
無機になっていた。こんな状況下で、自制心を忘れて。大切なモノが失われるかもしれないというのに。
気付けば礼春は立ち止まり、両頬を叩いていた。
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