第十六章 †生きて欲しいと願いを胸に抱いて†

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「な、なんや。どないしたんや」 「どうしたの、ですか?」 「・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 『なんすか?今の痛そうな音』 「・・・・・・馬鹿が」 前を向くと全員が振り返っていた。誰もが礼春の奇行に心配顔や頭を抱えた呆れ顔、無視もあるが様々な表情が並んでいた。 「済まない。先を急ごうか」 六人の間を突き抜ける様に礼春は先頭に出た。 「仕切るな狼」 「はぁ、相変わらず皮肉口調は変わらないな小僧。涼耶には聞かせられんな」 「うるさい。涼耶を助け出し、奴らを倒したら幾らでもお前の皮肉を言ってやる」 「涼耶の前でもか?」 「・・・・・・ああ、涼耶の前でもだ」 「―――ふふっ、楽しみにしているよ」 それきり、七人は黙って永遠に続かんとする森に包まれた小道を進む。 その刹那。 空の青と森の緑が消える程の赤熱が視界を染めた。 次に爆発音と衝撃波が耳を劈き体を揺らす。 屈んでやり過ごす全員が戦場に赤々と燃え上がる炎を目に焼き付けた。 「母様の炎だ・・・・・・」 舞可の言う通りなら、紫苑の先制攻撃が相手の出鼻をくじいているだろう。 だが、それは時間が確実に進んでいることを示していた。 「そろそろ衝突する頃合いか」 表情を変えずに影虎がそう言った。だが、礼春にはそれが聞こえない程に気になる異臭を嗅ぎ取っていた。 「人間の血・・・・・・?いや、それよりももっとしつこい臭い」
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