一章 湖畔の男

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『おチビさんたち、こんな夕暮れにどうしたんだい? 』 湖の畔で途方に暮れ、喧嘩をはじめていた二人に声をかけた男。 見知らぬ、しかも何をしていたのかこの時間に湖の畔にいた彼に警戒しないわけではなかったが……その提案に興味を持たなかったといえば。 「関係あるだろうね。今の村ができる前にあった村はその魔物によって一人残らず殺されたというから」 ごく軽い調子で語る男とそれに相反する重い内容に、姉弟は身を固くする。 「大丈夫。彼女を怒らせない限りは」 二人の様子に男はくすくすと笑い、安心させるように言葉を付け足す。 「聞きたいかい? 」 姉弟は一瞬顔を見合わせるが頷いた。 「じゃあ語るとしよう」 二人の返答に満足そうに頷き、男は語り始める。 ――それは歴史の闇に埋もれし物語 ――それは人々が封ずることを願う物語。 ――それは魔女と呼ばれた女の物語。 ――それは愚かな男の物語。
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