二章 唄う闇

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――舞台は欧州。 ――時代は中世という区分に属する以外は全くの不明。 夜の闇に歌が響く。 『眠れる水底  私は貴方を待っていた  泡沫の記憶  貴方はいずれ私を忘れる  私を葬りし正義  それは一時の狂気  だから……  すべてを捧げ  深紅の両腕を得ましょう  おぞましき穢れ  纏いて深紅と為し  言祝ぎの歌 呪詛の歌に変えましょう   そして私は貴方のもとへ 馳せ参ず……』 美しい歌だった。 しかし、子守唄のような旋律は心の中の触れられたくない部分を抉り出すようなものであり、人を不安にさせるものであった。 その詩は隠しきれぬ怨嗟をしかと抱いていた。
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