二章 唄う闇
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彼の前に広がる光景は神秘的でありかつ凄惨であり、同時に絶望的であった。 ステンドグラスから射す月光に浮かび上がる、天使の翼のように壁に飛散するは鮮血か。 その持ち主、この教会の主である司祭は説教壇にもたれかかるようにこと切れていた。 男は激しい嫌悪感を覚えるが視線を逸らさない。 いや、男の視線は深紅の翼の真下、物言わぬ骸の向こう側に佇む影に集中していた。
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