【上】

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俺様の名前は溝雹託徒(コウヒョウ タクト)。 成績優秀、スポーツ万能、そしてイケメン。 溝雹世界宝石採掘取引会社の社長の息子だ。年収十億円。何でも欲しい物は手に入る、何不自由ない生活をしていた。 俺様は、完璧な人間だ。 なのに。 この現状はなんだ? 砂漠の地べたに這いつくばって生きる為に、彷徨う。吹き荒れる熱風に押し戻されながら、彷徨う。食べる物を知らないのに空腹で足がもつれつつ、彷徨う。 ……最悪だ。 俺様は会社の跡取り息子なのに。親父の会社を継いでいく責任があるのに。こうなったのも、あいつがいけない。 全てあのガキのせいだ。 「こんにちは。溝雹託徒さん。ですよね?」 そいつは、家に帰る直前の俺様に突然話しかけて来た。 振り返ると、十四歳程度の女が立っていた。髪は長めでフリフリのスカート、いかにもわたし少女ですっ、と言った感じだ。どうせ俺様の格好良さに惚れた追っかけだろ。 残念だが、俺様はロリコン趣味はない。 「…何だ。」 「えっと。お父さんが資本家で現在サハラ砂漠へ赴き、遂にブルーサファイアを発見して、自然をどんどんと開拓している。ですよね?」 それを聞いて、俺様は目を丸くした。何でそんな事を知っているんだ?ただの俺様の追っかけにしちゃ詳しい。 「お前、何だよ。」 「私は澪(ミオ)。自然を保護する者です。失礼ですが、貴方からお父様にこれ以上開拓を進めるのは止めるように、言って下さいませんか。」 それを聞いて、俺様は溜息をついた。なんだ。政府のおっさんの娘か何かか。最近自然保護~とか抜かしやがって政府が親父の会社に口出しをしやがる。 ウザイったらありゃしねぇ。 自然なんか人間に使われる為にあるような物じゃねぇか。それを有効利用して何が悪い。 「止める気はねぇよ。さっさと帰れ。ガキ。」 ガンをきかせ、俺様は家の門に入ろうとした。そんな時に。 「…そんな貴方に、試練を与えます。」 「は?」 声が聞こえた瞬間。俺様は意識を失った…。
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