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初めて授業をサボって、初めて屋上って所に足を踏み入れた。
空にかかった消えかけのヒコーキ雲を見送って、山を染める濃い桃色に目を移し、一丁前に溜め息とか吐いたりして、その場に座り込んだ。
田んぼはまだ土色で、空は薄いブルーで、私は酷いグレーで、世界の鮮やかな色素に負けて、自分の存在が薄くなっていく気がした。
空に浮かんだ大きく真っ白な雲に、それよりも更に真っ白な太陽。
風はまだ柔らかく、髪を優しく靡かせる。
「ラピュタある気がしない?」
少し掠れた割と高い男声が、乾いた空気に浸透するように響いた。
「は、へ? ラピュタ?」
どこどこ?
どこに人がいる?
慌てて立ち上がって、自分で自分の上履きを踏みつけてよろめいて、倒れる寸前にようやく声の主の背中を見つけられた。
「イタっ」
膝からコンクリートに着地したせいで、激痛が体を走った。
「ハハハ、ダッセェ」
と、さっきの声の男子が笑い、私はそれにムッときて体を起こした。
「ダサいってひど……――」
「大丈夫?」
正に不意打ちだった。
さっきまでの少し子供っぽい声と一転して、落ち着きのある甘い声は心臓に図太い釘を打ちつけて、見上げた先にあった横顔に悔しいけれど
一目惚れをした。
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