プロローグ

4/5
前へ
/5ページ
次へ
「絶対ラピュタあるよなあ」 緑色のフェンスの向こうにいる彼は、大きな雲を指差してポツリと呟く。 「ラピュタってガリヴァー旅行記に出てくるラピュータ?」 「そうソレ」 私の言葉に彼が微笑んだことが嬉しくて、思わずニヤケてしまった。 落ち着け私! 好きな人の前でニヤケるなんてもってのほかだ。 「ラピュタはジブリか」 色素の薄い茶色い髪。 嘘みたいに白い肌。 彼はなんだか全てが美しかった。 フェンスにもたれかかり、幅が3メートルもないような屋上の向こう側で、彼が眩しく煌めいている。 「飛べるかな」 「へ?」 「なんだか俺、空を飛べる気がしてきたよ」 「冗談でしょ? ハハハ……――アレ? 今の笑いどころじゃないの?」 「うん。マジだよ」 と、二重のハッキリした瞳が私を刺した。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加