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すがすがしい秋の日光を一身にあびるようにして、良尚は背伸びをした。
屋敷から南へ少し馬を飛ばすと、東西へ流れる川に出る。ここの川原から、良尚の父、良兼(よしかね)が治める領土を眺めるのが、良尚は好きだった。
良兼が京の都から移住するまでは荒れ野だったこの上総の国(現在の千葉県中部)も、ずいぶん耕地が増えてきた。耕地を増やし、取れる税を増やし、着々と力を付けてきたのが良兼や良尚を含む一族、平氏である。
今や平氏は、平良兼の実弟である平良将(たいらのよしまさ)を頂点に板東(現在の関東地方)において絶大な力を持っていた。
ちなみに長兄の国香の息子、貞盛(さだもり)の子孫が、源平合戦で有名な平清盛(たいらのきよもり)である。
「う~ん……良い天気だ!」
仰ぎ見た空の青さと、屋敷を忍び出て自由になった開放感を全身で感じた。
こんな時、良尚はヒトに生まれた自分を呪わずにいられない。
鳥になりたい。
体中に風を感じて、自由に気ままに生きていけたらどんなにいいだろう。
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