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(叔父上が……死んだ?)
良尚にはそれだけでも衝撃的だった。血のつながった叔父が死んだのだから。
だが、それ以上に信じられないことに、父は実の弟の死を心底喜んでいるように見えるという事実が良尚を打ちのめしていた。
(鬼……)
良尚の喉がごくりと鳴った。
父が鬼に取り付かれた。そう感じるほど、鳥肌が立った。
確かに、父とおじの良将は、良尚が物心ついた頃から折が合わなかった。
その兄弟の溝は年を経るごとに深く大きく、埋められないものとなっていったのも、良尚にはわかっていた。
しかし、それでも血を分けた実の弟の死だ。
良尚にも別腹の弟が三人いるが、別腹であっても弟には変わりない。その死は、良尚には恐ろしく、悲しいものであると思う。
ところが、父と良将は同母の兄弟だ。小さいころから祖母の元で一緒に育ってきたはずなのだ。
それなのに──。
初めて自分の父が恐ろしいと感じた瞬間だった。
「あやつの息子は今、京にいる。跡目はそいつが継ぐことになろう──継ぐものがあれば、の話だがな」
良尚は、はっとした。
父が考えていることがわかったような気がしたのだ。
(まさか……)
「父上……」
良尚が口を開くと、父は我に返ったように、ばつの悪そうな顔をした。
話すつもりのないことまで、話してしまったと思ったのかもしれない。良尚はその父の表情から、もうこの話を掘り下げることはできないと察した。
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