1 畑の若様

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    「ところで──」    父の声に、良尚が父の顔を見直すと、いつもの父の顔に戻っていた。   「おまえ、また良尚などと名乗って、ちょろちょろと遊び歩いているそうではないか」    良尚は、その不意打ちに返す言葉を見失った。   「そ、そんなことは」   「もう15になるんだ。わかっているのか。小さなころに馬や剣を教えたのは確かに私ではあるが、しかし、おまえは──」   「父上。隣村が盗賊に襲われ全滅いたしました」    良尚は父の言葉をさえぎった。   「何だと? また盗賊が出たのか」   「盗賊が何とかならねば、安心して農作業もできず、せっかく取れた作物も奪われてしまっては、意味がありません。このままでは、民は減り、残った民も飢えで命を落としましょう。それを見逃せば、この国の衰退を招くことは必定。早々に対策を」   「そうだな。何か良い手はないか──」    父は腕を組んで数秒考えて、慌てて良尚を諌めた。
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