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「ところで──」
父の声に、良尚が父の顔を見直すと、いつもの父の顔に戻っていた。
「おまえ、また良尚などと名乗って、ちょろちょろと遊び歩いているそうではないか」
良尚は、その不意打ちに返す言葉を見失った。
「そ、そんなことは」
「もう15になるんだ。わかっているのか。小さなころに馬や剣を教えたのは確かに私ではあるが、しかし、おまえは──」
「父上。隣村が盗賊に襲われ全滅いたしました」
良尚は父の言葉をさえぎった。
「何だと? また盗賊が出たのか」
「盗賊が何とかならねば、安心して農作業もできず、せっかく取れた作物も奪われてしまっては、意味がありません。このままでは、民は減り、残った民も飢えで命を落としましょう。それを見逃せば、この国の衰退を招くことは必定。早々に対策を」
「そうだな。何か良い手はないか──」
父は腕を組んで数秒考えて、慌てて良尚を諌めた。
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