2 新しい翼

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  「鷲太(しゅうた)……」    良尚の口からこぼれ落ちた言葉は、傍らにいた幼い子どもに拾われた。    子どもはじっと良尚を見上げる。すると、秋晴れよりもまぶしく暖かい笑顔が彼にきらきらと降り注いだ。   「鷲のように勇ましく、自由にどこまでも飛んでいけるように。おまえの名は今日から鷲太だ」    子どもは微かに唇を動かした。  良尚は、その唇の動きが“しゅうた”と読めると、再び破顔した。   「そうだ、鷲太。気に入ったか?」    子どもは、こくんと頷いた。  良尚はその様子を見て、頷き返す。そして再び青空を見上げた。    その瞳には何が映っているのだろうか。鷲太は必死に良尚の視線を追った。   「鷲太。おまえは風に乗ってどこまでも遠くへ飛んで行くんだ」    鷲太は良尚を再び見上げた。その良尚の目が、一瞬、さびそうに伏せられた気がした。  急に良尚の背中が小さく見え、鷲太は鷹雄の言葉を思い起こしていた。     『おまえにも、新しい人生を下さる。だから、あの方のために生きろ』  
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