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ごうごう、と鳴る炎が、自分から全部、奪ってしまった。
わかってる。次は自分だ。
いいよ。
こんな体、“赤”にあげる。
もう、僕には必要ないから。
一緒に笑いあう家族も。
守るべき妹も。
何もないんだ。
僕の命なんて、もう、何の意味もない。
いっそ、父ちゃんや母ちゃんが、“赤”に喰われた時、僕も一緒に喰ってくれればよかったんだ。
なんで、僕だけ生き残らせたの?
僕は死ぬ価値すら、ないのかな。
そこまで考えて、彼は静かに目を伏せた。
でも、それも、もうどうでもいいことだ。
今度は自分もこの村の人たちと一緒に逝く。そして、村のみんなのもとへ、父ちゃんと母ちゃん、そして、妹のところへ行くのだから。
彼は燃え盛る家屋へとゆっくり足を進めた。
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