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(なっ……そんなに早く動けるのか!)
兵士たちより少し後ろにいた松吉は、ぞくりと寒気を感じた。
これでは、狙われたら逃げられらない。矢も歯が立たないというのに。
つまり、戦うことも逃げることもできないという絶体絶命の状況にあり、それに気がついたのは松吉だけではなかったようだ。
「わああああーーっ!!」
一人の兵が、たまらず悲鳴を上げて、逃げ出した。
彼が地面に投げつけた弓を目で追い、その後姿にあっけにとられていた他の兵たちも、駆り立てられたように逃げ出した。
これで、松吉たちの姿が獣に晒されることとなる。
(!)
真っ赤な燃えるような目が、まっすぐに松吉を捕らえた。
本当に獣であれば、動くものを目で追うだろう。それなのに、白き獣は逃げ惑う兵たちには目もくれず、ただ一点を見つめていた。
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