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あれほどに家臣を従えて出ていったというのに。
そもそも、国の主たる父が、単独行動をすることがありえない。同行した家臣たちが、それを許すわけがないのだ。
しかも、父の様子もおかしい。
まるで、どこをどう通ってきたか覚えてないというように、呆然と一点を見つめている。
不思議に思った馬番が首をかしげ、おそるおそる馬上の父に声をかけたのが見えた。
「と、殿……」
しかしまったく反応がない良兼に、馬番ほとほと弱り果てた顔になる。
きっと、父は戻って来てからずっとこの調子なのだろう。どうしていいかわからないようだ。
「父上!」
やっと、声の届く距離に来た公雅は父を呼んだ。
父が首だけを動かし、こちらを見る。
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