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「おい、大丈夫なのか?」
再び、頭上から彼を心配するように怒鳴る声が聞こえてきた。
(え? 頭上?)
驚いて、思わず後ろを振り返る。
途端、息ができないほど、強い輝きを放つ二つの目に──捕らえられた。
(──……)
吸い込まれる。
目が離せない。
もうその二つの目から逃げることはできないと悟った。
なぜだろう。
彼は、怖いほどの、強い光をその瞳の中に見て、動けなくなった。
「大丈夫そうだな」
その人はふわりと笑った。
それを見たと同時に、彼は自分の心臓が大きく脈打つのを感じた。
どくん。
どくん。
また一つ脈打つ鼓動に、全身の感覚が鮮明になっていく。
頭も回り始めたのか、やっと自分の置かれた状況が飲み込めた。
炎の中にその身を投じようとしていた自分は、この男に馬上へと担ぎ上げられた────命を助けられたのだと。
「良尚(よしたか)様!」
背後から蹄の音とともに別の男が姿を現した。その男は馬にまたがったまま一礼する。
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