第六話 買い物と彼女

18/33
前へ
/558ページ
次へ
……ってわけで更に十数分が経った。 その間、ずっとベンチに『おすわり』させられていた俺の気持ちを考えてみて下さい。 もう尻が石のように硬くなった気分だぜ、全く。 尻の感覚ないもん。 俺はとりあえず立ち上がり、棗のところへ向かった。 はぁ……だるぃ。ベンチに尻をくっつけているだけでこんなにも疲れるものなのか。 尻様々だな。 「もういいか?さすがに飽きてきたんじゃないのか?」 「……………こくっ…」 あ、戻った。また頷くだけになった。まぁこちらもこちらで彼女らしいからよしとする。 「で?どれなんだ?買いたいのは。上下合わせて二、三着くらいだったら買えるけど?」 「……………………。」 とりあえず一瞬の間が過ぎ、彼女は動き出した。 何て言うか…さ。 俺気付いたんだけどさ。 棗って楽しいときは弾むんだな。 あれだ、歩き方がほんの少し微妙に極少に違うんだ。 とにかく、棗の後についていく俺。 そして道ゆく間に服を手にとる彼女。 はぁ…なんとも器用ですね、はい。まぁ歩くスピードは結構遅いんだけど…。 多分選びに選んで場所を覚えて、それからてきぱきと取っているんじゃないのか? こいつ…買い物でそんなアビリティー習得したのか。 まぁそれはさておきだ。 数ヶ所で服を選び取ったあと、彼女はちょうどレジの数メートル手前で立ち止まった。 そして体ごと振り返り、俺に歩みを進める。そして服を差し出す。……無言で。 ……なんだ?俺に買えと?……まぁいいけどさ。 俺は棗から渡された服をもってレジへと向かった。  
/558ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4719人が本棚に入れています
本棚に追加