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湯舟からの脱出、脱衣所の突破。
まぁかっこいい言葉を並べてはみたが、単なる普通に風呂から上がって、そんでもって普通に服を着たー…なだけだ。
心が動揺…とまではいかないけど…それでもまぁ今は空回りしたいときなんだ。分かってくれ。
そんなわけで、ただいま俺は、ゆっくりとリビングへと向かっている。
別に母さんがいるわけでもないのに、何をやっているんだろうね、俺は。
脱衣所からリビングまでの廊下の十数歩。
こんなにも意味不明に足を進めたのは初めてだよ、うん。
俺は扉に手をかけ、そして……開く。
…と同時に中から声が。
テレビのような機械的な声でもなければ、あの可愛らしい棗様の声でもない。
中にいたのは……、
「ただいま~、そしておかえり~」
……まさかまさかの母さんだ。
何故こうもまぁ神様はいろいろと事を難しい方向へと持っていくのか…、マジで畜生め。
「…おかえり。で、酒は?今日は飲んできたのか?」
まずはこれを聞かなきゃ話は始まらない。
酒が入ってたら話したとしても、理解してくれないだろう。
「今日は飲んできてないわー。まぁ明日は絶対に飲まなきゃいけないんだけど」
「それを聞いて安心したよ。……えっと…、話がある。部屋を変えよう」
実はというと安心なんかはしていないんだが…。明日は酒を飲むってんだから今日のうちに話しておいた方がいいよな。
……ここ、リビングには棗もいる。部屋を移そう。
大事な話はしっかりとした場所で…だ。
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