第十話 グダグダな彼女

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とりあえず強打した彼女。目が開いてないまま体を起こしたりするからだ。 ……胸とお腹、共々を押さえながら目に涙を溜める彼女。 なんていうか……もう、たまりません。 「ええと……大丈夫か?ほら、痛いの痛いのとんでけ~……だ」 いや、痛いのは俺だ。いろんな意味で。 痛いやつはどっか行け~……ってな感じに、周りの空気が俺を拒んでいる。 ごめん、痛いの痛いの~な歳じゃないよな、うん。なんかすまんな、棗。 さて、こんなことにいちいち気持ちが沈んでいたら、俺なんかは一生前に進めない。 立ち上がれ、俺。 今は溢れる心の涙をじっと抑えるときなんだ。 「………………。」 ……棗がきょとんとした疑問の顔を俺に向け、ほんの少しだけ首を傾げる。 ……意味を理解してなくてよかった。 ……うん、切実に。 「さて、棗。いきなりだけどご飯にするぞー。準備手伝ってくれ」 「…………こくっ」 小さく頷き、立ち上がる棗。……胸とお腹をさする手の動きは変わらず。 そんなに痛かったのか? 寝起きの瞬間に足が吊るくらい? ……俺しょっちゅうなるけど。 あれ、『こむら返り』ってやつだよな。 そんなわけで、痛みのことを考えながらも、俺と棗はキッチンへと足を進めた。  
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