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とりあえず強打した彼女。目が開いてないまま体を起こしたりするからだ。
……胸とお腹、共々を押さえながら目に涙を溜める彼女。
なんていうか……もう、たまりません。
「ええと……大丈夫か?ほら、痛いの痛いのとんでけ~……だ」
いや、痛いのは俺だ。いろんな意味で。
痛いやつはどっか行け~……ってな感じに、周りの空気が俺を拒んでいる。
ごめん、痛いの痛いの~な歳じゃないよな、うん。なんかすまんな、棗。
さて、こんなことにいちいち気持ちが沈んでいたら、俺なんかは一生前に進めない。
立ち上がれ、俺。
今は溢れる心の涙をじっと抑えるときなんだ。
「………………。」
……棗がきょとんとした疑問の顔を俺に向け、ほんの少しだけ首を傾げる。
……意味を理解してなくてよかった。
……うん、切実に。
「さて、棗。いきなりだけどご飯にするぞー。準備手伝ってくれ」
「…………こくっ」
小さく頷き、立ち上がる棗。……胸とお腹をさする手の動きは変わらず。
そんなに痛かったのか?
寝起きの瞬間に足が吊るくらい?
……俺しょっちゅうなるけど。
あれ、『こむら返り』ってやつだよな。
そんなわけで、痛みのことを考えながらも、俺と棗はキッチンへと足を進めた。
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