第十話 グダグダな彼女

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……とは言ってもだ。これといって話すことはない。 今回は話す話題さえないんだ。意外に難題だな。 アニメのことを話すのは……ちょっと無理ですかね。 じゃあこの家のことは……、今はひとまずおいておこう。造りが嫌いだとか言われたら引っ越せるぜ。 スプーンを口に運びながらも考える俺。 あ、そうだ。そうだよ、母さんの話にしよう。これなら棗も食いつくかも知れないし。 ほら、裸の付き合いっていうじゃないか。 ……なんか意味合いがあっているかは微妙なんだけど。 俺は彼女の方を向き、口を開いた。 「棗、食べながらでいいから答えてくれ。……正直母さんのこと、マジでどう思ってる?」 食べながらでいいと言ったが、彼女はこの言葉でスプーンを降ろす。 「…………ふぃふょー」 ……食べ“ながら”だな。ある意味で。いろんな意味で。 さすがにもぐもぐとしながら発音しないでいただきたい。 ……俺から言ったものの、やっぱりしっかりと箸ならぬスプーンをおいて話を進めるとしよう。 聞き取れなかったら意味がないからな。 俺もスプーンを降ろし彼女を見つめる。 いや、この場合見つめるはおかしいか。正確には、彼女と目を合わせる、だな。 「すまん、もう一回言ってくれ。聞き取れなかった」 今の発言は彼女に失礼か。……いや、いちいち気にしてたら前に進めない。 ……なんかいろいろと失礼だな、俺。 「………………微妙」 今度はしっかりと聞き取れる声で彼女は俺に答えてくれた。よかった、普通な対応で。 『微妙』ねぇ……。とりあえず好印象はもってないってことね。 かわいそうに、母さん。 人間、嫌われたら終わりなんですぜ。 いや、俺が言えたことなのかはこの際別として。  
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