第十一話 運動会と俺

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  「お、おはよう。……物凄い格好だな」 思わず口に出してしまうほど、滑稽な姿なんだよ、マジで。 L字型はきついって、マジで。 L字型でベッドからもう完全にずり落ちている彼女もここにいる。 そして、そんな笑いを内心堪えられそうにない俺もいる。 ……棗、マジでごめん。俺、噴き出しそうです(笑いが込み上げてくる的な意味で)。 俺が一人、こっそりと内心笑っているなか、 彼女はすぐにそのL字型体制を横に倒し、いつも通りの、布団に倒れ込むような体制の寝方になってしまった。 そうしてまた彼女は俺と一瞬目を合わせたあと、再びゆっくりと目を閉じる。 ……いや、閉じるなよ。 「棗、今日は今すぐに起きてくれ。……昨日はなんかいろいろと勉強したらしいけど、現実はそんなに甘くはないから。次の日になっちまえば夜更かしはNGだ」 「…………ぅー……」 限りなく小さな声で彼女唸る。 ……起きることを、これだけで拒否しているのが分かる。 朝にも夜にも弱いとは……それはそれで困ったものだ。 彼女はいやいやというかのように小さく首を振りながらも、半身を起こした。 ……一応目は開いている。体が脳からの指令を拒否しているかのようにその場から動かない。 「じゃあ俺はリビング行っちまうぞー? 棗一人になっちまうぞ~?」 俺はドアノブに手をかけ、いかにもドア開けちゃいます的な感じ直前に俺は彼女に問う。 ……今にも開こうと思えば開ける。 さて、それを聞くやいなや、彼女の猫耳の微少な反応と共に跳び起きた。 ……文字通り彼女は体を起こし、跳び起きた。 なんだ? 俺と離れたくないんですか? ……さすがに自意識過剰か。これは自重しよう。  
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