第十一話 運動会と俺

8/95
前へ
/558ページ
次へ
俺は彼女のことについて、頭の中、つまり脳内会議を一人繰り広げる。 彼女の俺に対する位置か……。 俺的には、遠い親戚なんていうフラグもありかと思う。 従姉妹はちょっと関係が深すぎるかな~……とか、はたまた彼女だと、後々友人に何を言われるかなんて分かりきっているし。 無難なところを選択しておくのがこの場合一番だろう。 よし、遠い親戚決定。今日のうちに母さんに伝えておこう。 ……ついでに人見知りな部分のことも。 人見知り……ねぇ。彼女の場合、この言葉一つで片付けられればいいんだけど……。 ……とにかく、彼女が重度の人間嫌いでなくてよかった。 いや、それはそれで人間嫌いなら俺にだけ心を開いてくれるってことになるから、別にそっちでも構わないんだけどさ。 俺はテーブルにぐで~んと体を預け、静かに寝息をたてている彼女の方に首を向ける。 ……ん? 静かに……寝息をたてている? はぁ、これはあれか。 実はさっきのふらつき無しの歩みは演技で、実は脳半分は寝てました~……的なやつか。 策士だな、棗。 だがそんな俺は優しくはない。すまんがな、棗よ。ご飯の時間だ。 俺は中指の爪を親指の腹で押さえるような形を左手で作る。 ……あ、これ普通に言うとただのデコピン。 はっはっは、棗の反応が楽しみだ。  
/558ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4719人が本棚に入れています
本棚に追加