第十一話 運動会と俺

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……今デコピンの構えをとった人、正直に挙手! いないよな? 大丈夫だよな? ……意外にしてたりして。 さて、こんなのはどうでもいい。うん、この際。 問題なのは俺の左腕についている左手。どうしてもぶつけたいが、紳士としてどうか~……なことで俺は迷っている。 俺の数少ないSっ気と、かぎりなく少ない紳士魂がぶつかり合っている。 ……まぁ多分Sっ気が勝つと思うんだけど。 そんなわけで、彼女の額数ミリの、一番当てるのがベストの場所で左手を固定。 調度よく、彼女もこちらに向けてテーブルに腕を組み、静かに寝息をたてている。 本来ならばずっと寝かせてあげたいところなんだが……、現実はそんなに甘くない。 棗には、寝るときには寝て、起きるときに起きる、そんなような女の子になってほしい。 ほら、『寝る子は育つ』っていうけど、同立に『寝てばっかりいると豚になる』というだろ? 前者ならいいけど……、後者なら言ったやつぶっとばーす。 川の向こうの花畑に強制転移だ。 さて、こうもまぁ俺の中でいろいろと思いがめぐりめぐっていたのだが、 実をいうとただの綺麗事。 本当の理由は、ただ単に彼女の反応がみたいだけなんだよな……。 ま、ある意味男の子の興味心ってやつだ。 そんなわけで、非情にも俺は左手の引き金を引く。この場合引き指っていうのか……? なんて考えながら。 ペチ という軽い音が俺の耳に届いた。  
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