第十一話 運動会と俺

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ジムを完全に登りきり、彼女の横に腰かける頃には、俺のいたずらな冒険心は陰を潜めていた。 ジムのてっぺんを流れる空の風、お昼過ぎのやや暖かな優しい風。 そんな風が俺たちを包んでいるかのようにも思える。 てっぺんからの景色……とはいっても、公園のジムなわけだからたかが知れてるが、それでも公園内を一望出来るくらいの高さはある。 まぁそんなジムの上ってことだ。 「登ることに対しては特に意味はあったのか?」 「……………………。」 『登りたかったから登っただけ』。そんなようなことが俯いた彼女の表情から伺える。 まぁなにごとも、必ず意味があるから物事を進める~なんてことでもないよな。 まぁいいのさ、こんなことなんて。 今はただこの風を感じていたい。 ……ただそれだけのことだ。 公園内には俺たち意外いないがための静けさが、 よりいっそう周りの木々や草むら、そういった類の自然の音をひきたてる。 「風……気持ちいいな。部屋の中じゃ感じれないな、これは」 「…………こくっ……」 いつも通り、彼女は無言で小さく頷く。 こういうときはどうしても『のほほん』としてしまう俺だ。 そんなわけで、軽く数分間、俺と棗は、風という名の“外”を感じていたってわけだ。  
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