第十一話 運動会と俺

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長い登り坂を俺と棗は歩みを進める。 ゆっくりと、ゆっくりと。 歩幅小さめな彼女に合わせながら、俺もゆっくりと。 毎日登っている道とはいえ、彼女と歩くのは始めてな道だ。 ここまでスローなペースだと、本当に辿り着けるのか? とか思ってしまう俺がいたのだが、 そんな長そうな坂道だったのだが、彼女が疲れてダウンすることもなく、無事に登りきることに成功。 ふっ、毎日この道歩いている俺にとってはこんな坂なんか眼中にないんだぜ。 ぶつかりにくるんだったら“心臓破りの坂”でもなんでもこいってんだ。 完走ならぬ完歩してやるから。 そんな些細なことで調子に乗ってしまい、道にぽつーんとたたずんでいた俺だが、 彼女が再び俺の服の袖を引っ張るという非常に萌えた行動によって、自分の世界から戻ってきた。 さて、それでは話を戻すとしよう。 「この先が俺の通ってる学校な。中学校だから高校に比べればあんまり豪華じゃないけど……、 結構楽しい場所だ」 独り言なのか、彼女に話しかけているのか、この際微妙な発言だったが、俺はつぶやかせてもらう。 独り言だってときには大切なんだよばーろー。 ……そんな俺の言葉に対して、彼女は小さく頷いた……と思う。 今回の頷きは珍しく俺も感じ取れなかった。 というより見てなかった。 頷きは彼女の唯一と言ってもいいほどの返答方法なのに……。 見逃したとか、そういった類のものはなくしていかないとな。 よし、 これからはずっと棗を見続けてやる。  
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