第十一話 運動会と俺

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  そんなスピードで歩いたり途中彼女がバテたりといろいろあったが、とりあえず寄り道、道草その他etcをせず、無事に自宅へと帰り着いた。 あ、うん。ほら、省略という名の作者の力。 時間経過だって操れる作者アビリティ。実に便利なものだ。 さて、そんなわけで俺は我が家のドアを前にしているのだが、ある理由でドアノブに手を置くのをやや躊躇っている。 正確にはドアを開けるのを躊躇っている……という感じ。 『ただいま』を言った瞬間、なんか俺に良くないことが起きそうな予感がしなくもない。 かと言ってこの扉は開かなければいけない。 できれば開けた瞬間目に飛び込んできたのは母さんだった的なものは勘弁してくれってもんだ。 よし、こういうときは棗に任せるのが1番だな。 「棗、悪いけど……先に入ってくれ。なんか嫌な予感がしなくもない気がする」 正直自分でも何を言ってるか分からなくなりかけた俺だが、 とりあえず彼女に頼んだ。 それにたいして彼女はいつも通り頷くと、俺の代わりにドアノブを下げる。 ここらへん普通に出来る棗に乾杯。 「……ぅぃー……」 「ただいまー。今帰ったー」 彼女の萌えボイスに重なる俺の声。 うん、ピッタリと。 まぁそんなことはさておき、扉が閉まってから数秒後、だんだんと大きくなる足音が玄関へと聞こえてきたわけだ。 『お出迎え』という甘ったるいもんならいいんだけどな……。  
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