第十一話 運動会と俺

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      ……次の日。 うん、今度は本当に次の日。運動会の朝ですわ。 もちろんのことしっかりと日記は書いた。 ただ単に章変えじゃないだけだからな。 さて、そんな小説事情は置いといて。 温もりを感じたまま寝るつもりだった俺なのだが、最後はしっかりと自分の布団で寝ました。 なんというか……空気が違うっていうか棗に酔いそうになったというか……うん、とりあえず危なかった。 いろんな意味で。 早いとこ彼女に会おう。いろんな意味で欲求不満、欲求不満。 もちろん性的な意味ではなく。 俺は神的な速さで布団をたたみ、端へ寄せておいた後、これまた素早くリビングへと向かった。 廊下を過ぎ、とりあえずはリビングの扉を開く俺。 その先のキッチンにいる母さん。そしてリビングに寝転ぶ棗。 そしてリビングの扉を過ぎ、すぐに彼女の隣に座る俺。 後ろから抱きしめちゃいたいところなんだが、そこは俺の紳士的な理性で押さえつけておく。 「おはよ、母さん。おはよ~棗~」 母さんへはえらく適当に。棗には猫撫で声で。 ええ、差別ですよ。 俺の声に体を起こし、更には……、 更には。 更には! 俺に身を擦り寄せて、いや、どちらかといえば寄り掛かってきた彼女。 ……いつもの彼女の反応じゃないな、これは。 ひどく温もりを感じたがっていますな、これは。 「母さんに変なことされたのか?」 これくらいしかないよな、やっぱり。 「………………こくっ」 彼女は顔をこちらに向け、小さく頷いた。 ……君のことはなんでも分かるのだよ、棗くん。  
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