第十一話 運動会と俺

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部長氏の一言により、再度トラック内を見る俺。 最後のランナーを意味する“アンカー”直前のランナーが走っているという絶妙かつ微妙な時。 相変わらずいい勝負、抜くか抜かれるかはアンカーにゆだねられた! という感じになっている。 思わず立ち上がって応援する前の方に座っていた男子。 その後ろで横から首を出す男子。 やっぱり一発目ということもあり、熱狂的になるのも無理はない。 ……ちなみに、それを横からクールな呆れ顔で見ている女子ら。 ここらへん、女子の方が大人な気がします。 さて、たった今(十数秒後)応援席の向こう側、つまり本部席側でついにアンカーへとバトンがまわった。 これにより更に熱狂するこの場。 ……何度もいうが、これは“一発目”だからだ。 もう少し種目が進んだらこの熱狂はおさまるだろうな。 ……四分の一、半周、ラストスパート。 どんどんと加速する勝負、そしてアンカーたち。 離し離され、抜き抜きかえし……。たった一周のなかに多くの熱い闘いが秘められている。 俺も熱中しかけていた……そのときだ。 座っている俺にいつぞやの服をチョイチョイと引っ張られる感触。 こんな忙しいときに……。 俺はしぶしぶ後ろに振り向いた。 目に映ったのは、 「…………こくっ……」 待ち人、来たった。 うん、来たるではなく。 俺が待っていたのは、棗、ただ一人。 俺の後ろで俺にしか分からない微笑をうかべる彼女。 ……待ってたぜ、こんちくしょー。  
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