第十一話 運動会と俺

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ぐるっとまではいかないが、俺と彼女は本部席までの半周の半分、つまり四分の一を時計回りで校庭を歩く。 本部から数えると、 時計回りに、本部、保護者スペース、応援席、保護者スペースとなっている。 この場合、四つ目の“保護者スペース”の場所へ向かっていると思われる。 棗が前を歩き、その後ろを俺が歩くという昨日もあったこの状況。 ただ違うのは場所だけと言えるだろうな。 保護者スペースの場所へと着き、更に軽く奥まで入っていく彼女。 密集はしてはいないのだが、肩がぶつかりそうになる彼女を見るたびに一瞬ヒヤヒヤとする。 まぁそんな心配も虚しく彼女は一般人の方々をひらりとかわし、ずんずんと突き進む。 それに対しての俺は、もう何度肩を一般人にぶつけてしまったことか。 かなりの回数詫びを入れた気がする。 さて、そんな状況の中、ふと彼女は立ち止まり、そして振り向いた。 ……そんな彼女の前方には目的の母さんがいた。棗、ちゃんと俺に道案内できたようだな。 「棗ちゃん、道案内ご苦労様。……んで作者、あんたいつ出んのよ?」 出会った矢先にこれ。 最初は棗に向けて言った一言。 二つ目は俺への一言。 無性にツッコミを入れたいのだが、まぁそれは押さえ付けておくー。 あ、ちなみに余談、母さんの『ご苦労様』に対して棗が小さく頷いていた。 やっぱり話は聞いているんだな。 さて、俺の母さんへの返答だ。 「多分……次の次」 これ、プログラム表参照。さっき見せてもらったついでに確認しておいた。 ……母さんも親なんだな。若干安心な俺だ。  
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