第十一話 運動会と俺

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「じゃ、作者、行ってら~。私らだいたいここらへんにいるから。 私に会いたく一一「うん、棗に会いにくるわ」 最後まで聞きたくなかったので、母さんの言葉を遮らせてもらった。 母さん……、差別。 棗と俺への、差別。 まぁそこらへんポジティブにいくか。棗の可愛さに皆が優先するのはしょうがないことだもんな。 俺が嫉妬することでもないしー。 さて、若干の一人沈黙が流れている間に、 母さんはトラック内を見つめ、棗さんはこちらを見つめ、俺は棗を見つめている。 「棗、“こっそり”と遊びに来いよ? クラスの野獣どもが騒ぐといけないからな」 「……こくっ……」 いつも通りの彼女の頷きを確認したあと、俺は母さんと棗に背を向け、自分の応援席へと戻っていった。 あ、ちなみに、 向かう途中でみた運動場トラック内、三年生の皆さんが、 “タイヤ”だの“台車”などのなんかいろんなもんを担いで入場していたのが見えた。 多分三年の学年競技なんだろう。 中学生の運動会って意味不明なやつが多い気がするのは俺だけであろうか。 ……うん、来年は是非とも意味不明ではないやつをやりたいな。 うん、切実に。 さて、そんな非常ーに切実なことを思いつつ、今度こそ自分の応援席に戻ったわけだ。  
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