第十一話 運動会と俺

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「さっきの非常に守ってあげたくなるなるオーラ全開の可愛い娘だれ?」 ほら、早速来ました野獣1。こいつはさっきの女子な。 俺が自分の椅子に座った瞬間、応援席右端の女子が俺に問いかける。 「え、あぁ……まぁいろいろと。コウノトリが運んできた世界の宝」 適当に答えた俺。 ほら、いちいち相手にしてたら運動会に集中できないだろ? 野獣1も運動会に集中できないだろ? まぁそんな感じのあしらいだったわけだ。 さて、にもかかわらず……その野獣1、 「彼女? 彼女!?」 三年の意味不明な競技が始まったトラック内には目もくれず、野獣1は俺に再び問いかけてくる。 「はぁ……。あ、あんなところに光る未確認飛行物体、通称『UFO』が」 あからさまに棒読み、更には名指しの『UFO』。必殺の小説クオリティを駆使し、俺は野獣1の気を紛らわせようとする。 ほら、あんなところに太陽の光を浴びて輝く雲があるよ? だから野獣1の気よ、紛れておくれ。 「ねぇ彼女? 彼女なの?」 ……さすがは俺の小説。全くの効果ナシ。この頃作者としての能力が落ちてきてるな……。 「えぇ、いや、はい? うん、でも、そうなの?」 肯定、否定、疑問詞。 肯定、否定、疑問詞。 俺の必殺の返答。これを返したやつはいまだ一人もいない。 これに対し野獣1はしばしの沈黙を見せた。 俺の勝利確定か。 きっと野獣1の顔に見える冷たい目と呆れた顔は気のせいだよな。  
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