第十一話 運動会と俺

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「お前にはまだ早いっ」 「………………。」 更なる俺の叩きこみによって、野獣1は言葉を発さなくなった。 完全なる俺の勝利だ。 勝ったことにより(悲しく)、やや気分が良くなっている俺。 ここらへんで野獣1のことはひとまずおいといて、一度トラック内を見ておくことにする。 ただいまは三年生の、トラック内にある、後ろに意味不明にタイヤをつけてある台車に人を乗せる。 その人とはくじ引きで台車に乗せる人を決めるというもの。 それで走り、途中にある高跳び用の棒をくぐって次の人に繋ぐという競技。 台車は板に四つ車輪を付けた簡素なものだ。それを引っ張る四、五人。 ……俺的には、中に乗る人が可哀相でたまらない。 走らせる人にタイヤの煤が無駄に手についたり、 タイヤの反動で台車が無駄に曲がって倒れたりと、なにかと嫌な競技だと思う。 三年生、あんたらは何をしてるんだ。 考えた前生徒会およびそれに関わった教師の皆さんにツッコミを入れたい。 更に悲しいことに、この競技には熱狂的な熱い応援はない。 あるとすれば“意外な人”が乗ったり、そんな人が乗る台車が倒れたりしたときに出て来る笑いくらいなもんだ。 もう既に中盤に差し掛かっているこの競技。調度たった今、ある一つの台車に“校長”が乗せられたところだ。 ここで走らせる四、五人の三年生方がノリのいい人たちならいいんだけどな。 いきなり走っているときに急ブレーキをかけたりして、台車をわざと倒れさせたりさせたら面白いんだよ、うん。 そんな皆がわくわく感で心が踊る、意味不明に笑える競技がトラック内で繰り広げられていた。  
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