第十一話 運動会と俺

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……三年生が引きずる、トラック内を走る“校長”乗車済みの台車。 この台車、他のところの台車よりも走り方の変化が大きい気がする。ほら、揺れ方? 左右の揺れが半端ない。 これ、まさかの校長吹っ飛ばしフラグ? 「一一一一きゃわっ!」 台車が大きなカーブに差し掛かったとき、乗っていた校長が物凄い地面スレスレに倒れかかった。 普段は渋い声を発する校長も、今回ばかりはいかにも可愛らしい裏声を発していたってわけだ。 これに、一同大爆笑。 更には、校長は顔を真っ赤にして……、 ……照れているはずもなく。なんか意味不明に台車の上でむやみやたらに喚き散らしている始末だ。 プライドに傷をつけられたんじゃないんだろうか。 校長、いろんな意味で……乾杯。 さて、そんな茹でられたタコのように真っ赤な校長が乗せられた台車。 その台車は数秒後、案外無事に次の組のもとへと渡され、校長は台車から降ろされた。 どこか引きつっていた校長の顔も、何故か今は晴れ晴れとしている。 さわやか~な笑みを浮かべる校長。 実は絶叫マシーン的なものは苦手なのかもしれない。 ……かくいち俺もそうなんです。怖くて速いのは無理なんです。 あんな台車のはまだ速いとは呼べないのだろうが、いろんな意味で……うん、乗りたくないな。 まぁそれはさておき、そんなことを考えていた俺が再び意識をトラック内に戻したときには、 今度は現生徒会長が台車に乗らされているところだった。 ……会長、ご愁傷様。  
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