第十一話 運動会と俺

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とりあえず俺たち選手一同は、3~7人が横一列に組々が並び、だいたいの集計が済んだ。 競技者は多分こういう微妙な時間でわくわくとイライラが入り交じっているのだろうか。 みんな、青く澄み渡っている空を見たり、ワイワイガヤガヤとしている保護者スペースの方をみたりでそわそわしている。 俺も何故かこの入場門前からじゃ絶対見えないことを理解しているのに、棗を探してしまっている。 これはもう、いい意味で病気、棗依存症だな。 保護者スペースの内程にいたから、こちらからじゃ見ることはできない。 狙うとしたら、入場のための外周回りのときの一瞬ぐらいだろうな。 よし、そのときに頑張ろう。 うん、競技そっちのけで。 さて、そんなことを考えていたそのとき一一 「これから、第四種目、『増人増脚』を始めます一一」 軽快(?)なBGMと共に、放送委員の種目説明のアナウンスが運動場をつつんだ。 やっとこれから“俺たちの”第一種目が始まったわけだな。 やっと“俺たち”の参加する運動会らしくなってきたな。 ……これ、本日何回言ってるんだか。 棗が来た時点で俺の運動会は始まってるんだけどさ。 それでもみんなと成し遂げたい運動会ってのも俺の中には存在してるのよ。  
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