第十一話 運動会と俺

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なんだかんだ言っても、やっぱり成し遂げたい運動会。 そう思っている俺と、多分思っていてくれているだろうクラスメートと。 まぁそんな感じで、他の競技と同じように、トラック内を使っての入場は始まったわけだ。 普通ならば前を見、横目で観覧者の皆さんを見、なはずなんだが、俺は違う。 全員『駆け足』という結構隙のない入場でも、俺は観覧者を見、横目で前を見、なわけだ。 ほら、棗を一目拝みたいってわけなのよ。 『……頑張って』 くらいは聞いてみたいものだが、俺もそこまで高望みじゃない。 彼女の“俺にしか分からない微笑み”が見えるだけでも充分ですよ。 さて、そういった心情でむかえた入場、彼女の前の『道』を通るとき。 駆け足という不利な状況下、俺が本腰を入れて彼女を探し、 そして……求めていた彼女と目があった。 もちろんのこと、彼女は帽子被ってるからネコミミは拝めなかったけど。 それでも、彼女の、俺にしか分からないような微笑みは充分に確認出来た。 人込みの中、こちらに上半身だけを見せていた棗、 向こうもちゃんと俺を探していてくれたようだ。 ……棗が俺を探してくれていたかは彼女にしか分からないけど。 それでも俺と目が合ったから勝手にそうさせてもらうー。 とりあえず、脳裏にそんな彼女の微笑みを焼き付けながら、俺は競技開始までの入場を歩み進んだわけだ。 棗の笑顔、これは俺の中のアルバムに保存されました。 これから増えていくつもりなんだな、これが。  
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