第十一話 運動会と俺

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俺の組の組員が肩から腰へとかけていたタスキを次の組へと託し、俺たちは地面へと倒れ込んだ。 俺の組は一度も転ぶことはなく、更には躓くことさえない、とても好成績だった。 早さは期待出来るかどうか不明の微妙な速度だったが、それでもまぁ足を引っ張っていることはないだろう。 今はただ……息を調えることに専念したい。 ほら、俺、極度の引きこもりよ。部活は一応やってるけどさ、 ほら、走り込みをしないのよ、俺の学校の卓球部。 まぁそんなわけで、走る方だと体力が続かないわけなんだ。 いまだ荒々しい息を吐くなか、俺は首を上げ、トラック内を見渡す。 本部席側と応援席側を走る対象的な、連なる紅白の鉢巻き。 最初に書き忘れたが、思わぬ事故を防ぐために、紅白スタート地点は別々になっている。 増人増脚で相手の組を抜かすなんて転んだとき意外はほとんどありえない。 ただ今どちらも一定の距離感、一定のペースで走っているところを見る限り、いい勝負と言える 抜かし抜かされがない分、いくらかは熱気が落ちるのだが、 さっきの競技よりかは完璧に応援の声が聞こえる。 やっぱり一番盛り上がるのはリレーのようだな。二年のリレーは午後に入ってから。まだまだ先は長そうだな。 運動会とはいえ……気楽にいくとするか。 トラック内での静かな戦いに、俺もまた膝をついていた体を起こし、首だけでなく、しっかりとした目線で今トラック内にいる自色の方を見た。  
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