第十一話 運動会と俺

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「うちの学校は観覧者参加系の競技はないからな~……残念だよ、うん」 「…………残念」 微妙に、びみょ~に悲しげな顔をする彼女。 参加したかったかどうかは不明なんだが……そこらへんはまぁ運命を恨むとしよう。 更に歩みを進める俺と棗。二人横に並んで歩いても大丈夫な運動場の一角。 道行く人々よ、棗の可愛らしさに平伏しやがれ。 さて、そんな一人で萌え萌えとうろたえていた俺なのだが、前方に俺の応援席が見え、普通に平常に戻った。 こんな浮かれアホ面を見られたら……俺の評価はがた落ちだからな。 あ、棗が隣にいることはさしずめ問題はない。 ほら、俺のような男、もとい漢には、美女がつきもんだろ? ……ええ、自重ですね、はい。 応援席が更に近づいてくると、俺は更に応援席から離れ、外周側へ近づいてゆく。 棗は見つかってもいいんだが、俺からは非公開だ。 希少価値だ。棗と俺がいること、すなわちステータスなんだ。 あぁ、自分でも言ってることが分からない、そんな俺のクオリティ。 まぁそんな俺は、ふとフィールド内を応援席を挟んで覗いた。 応援席から見える校庭フィールド内、一年生がわらわらと何かをしている。 うん、何か。理解できない。潰れたボール、地面にはフラフープ、顔には先っぽに小さな穴があいた円錐状の筒。 うん、何がしたいのかよく分からない。 まさかの目隠しプレイ(競技的な意味で)。こちらも同じく三年生の競技と同じような、笑いを取る競技なんだろう。 今年の運動会……何故かおふざけが過ぎている気がするのは俺だけであろうか。  
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