第十一話 運動会と俺

67/95
前へ
/558ページ
次へ
おふざけ競技を見て、少しの間、応援席のずっと後ろで足が止まっていた俺。これじゃ散歩になってないな、うん。 でも、俺のことをちゃんと隣で待っていてくれる、そんな彼女もいた。 俺の顔を、深く帽子を被った、あの美顔で覗いてきている。 うん、超上目使いをありがとう。 「…………作者」 「ん? どうした? ……ぅ、ジャストミート」 ふと彼女は下から俺を覗いている中、激小さな声で俺の名前をつぶやいた。 こっちでさえ、今は下が見にくい状態になっているってのに……、 いきなり名前呼ばれたら無意識に下を向いてしまうじゃないか。 俺も下を覗いたら、再び彼女の上目使いがこんにちは、だ。 自然と俺も照れてしまうのが分かる。やべ、顔、今俺、赤いわけじゃないよな? 「……次……行く」 「え、あ、あぁ。今行く。今行こうな」 超無表情に等しいむすっとした表情でこちらを下から見上げてくる彼女。 うぅ……ダメだ、やばい、俺、上目使いに弱い気がする。 俺は急いで一歩を踏み出し、このいろんな意味で危ない状況を打開した。 俺を覗いていた彼女も俺に一歩遅れて着いてきてくれる。 ……ふぅ、無自覚って怖いな。 自分が可愛いこと、自分がなにをしているかに気付いてないなんて。 棗さん……あなたは正真正銘の男子キラーでしょうよ。 応援席に座る野獣どもはみんな棗に飛び付くだろうよ。 俺? 俺は紳士だから大丈夫、うん。  
/558ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4719人が本棚に入れています
本棚に追加