第四話 母さんと彼女

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  鍵を開け、俺から扉を開ける。 「たっだいま~っ」 「あ、あぁ、お帰り」 やっぱり母さんだった。予想が現実になっちまった。 「ご飯は食べてきたから~」 ……あれ? ここまでの会話を整理してみよう。 普通に会話が成り立っている。 仕事帰りなはずなのに、あまり酒の匂いがしない。しかも、何故に酔っていない? 母さんは普通に靴を脱ぎ、中へと足を踏み入れようとした一一のだが、 「あら、この靴は?」 さすがは母さんだ。無駄に鋭い。棗の靴にも一発で気付きやがった。この場合は“彼女”という設定はひとまず置いておくとして、 「珍しく早いな。母さん、酒は?」 しらばっくれてやる。それと、この包帯ぐるぐるの手には何もつっこみは入れないのか。 「今日は飲んでないわ。 二日酔い? 知らないわよ、そんなの。 今日は軽~く気分がいーいーのー」 なるほど、奇跡っていうのも時には起こるらしい。 酒は飲んでいない……。もしかしたらこの説得、いけるかもしれない。 「靴のことだったっけ。 ……今説明するよ」 やっぱり『彼女』という設定で一度通してみよう。 それで無理なら、俺の知ってる限りのことを話してやるんだ。 俺と母さんはリビングへと到着。 テーブルの横でしゅんと座っている棗。ふと、彼女は俺(ではなく、横の母さん)と目が合う。 あ、猫耳とか尻尾とかはどうしよう。帽子でも被せときゃよかったか? 「………………?」 相変わらず彼女の顔は無表情。 棗さん、俺も貴女のようなポーカーフェイスを学びたいです。 「まぁ、可愛いから一応許すけど、一応説明してもらえる?」 あ、案外通ったな。だが、いざ説明となるとしづらい。 さて、ない知恵必死に振り絞って考えよう。  
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