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棗…お願いだ。母さんになんとか言ってやってくれ。
いや、まて、明日のことを考えれば…棗はどうすればいい?学校に連れていくことは出来ないし…、これは大問題だ。
「それで…さ。彼女…いろんな理由で学校行かないんだよ」
「あ、そう。それで?別にいいじゃない」
……へ?何かがおかしい。
母さん、こんなことをすんなり了承しちゃっていいのか?
いつもの母さんなら「何故?」とか聞き返してくるはず…。
若干納得出来ない俺だったが一応よしとする。
しばらく沈黙が続き、
母さんは俺の方向から彼女のいるリビングへと顔&体を向けた。
そういえば俺らは立ち話してたな。
母さんは若干しゃがみ込み、棗に話しかける。
「こんなこいつだけどよろしく頼むわね♪」
そして微笑みかける。
「……………こくっ…」
…さっきまで空気と化していた彼女が小さく頷き返す。
どうやら今度は俺が空気になっちゃったよ。
まぁ彼女も、他の人から見ればかなりの無愛想に思えたかも知れない。
でもあれが彼女の返事の仕方なんだ、仕方ない。
というよりも俺、よろしくされる方だったし。俺が棗をゲット…もといお持ち帰りしたんだから…俺に頼めよ!
まぁ……いいが。
母さんは手に持っていた薄いコートを肩にかけ、立ち上がった。
「それじゃ、邪魔な私は仕事に帰るわね。多分私は…四、五日は帰ってこないわね。この家を任せたわよ」
あ、いや、まぁ…邪魔ではないんだけどさ…。とにかく、調度いい時に来てくれてありがとうよ。感謝してる。
母さんはまた玄関の方へと歩き出した。…せめて見送るか。金稼いできてくれてるんだ。
…意外に親孝行だろ?
軽く短い家の廊下を歩き、玄関のドアを母さんが開け、閉める時に最後に一言口を開いた。
「ヤる時はやさ「違う!しない!しな――ガチャ!!
…………。」
最後までいい終わらないうちにドアが閉まり終わった。
俺的には――
「お萩全部食べてね?」
的な奴を期待していたのだが(笑)
とにかく…棗がここにいてもよい理由が出来た。
まぁ…よしとするか。
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