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理沙は川を眺めていた。
昨日列島を舐めた台風が落とした水が、山から川へ、そして海へと流れ込む。
川は濁り、増水してごうごうと音を立てる。
理沙はずっと川を見ている。何か思い詰めているわけでは決してない。ただ無心になりたいだけである。目の前を流れるとてつもないほどの濁水が、理沙を何故か引き付けた。
日々同じことをする。これほど大変なことはない。常に意識し、行動することは何よりも疲れることだ。
理沙は朝にめっぽう弱い。が、この川岸に腰を下ろし、流れていく水を日々見つめ続けることは欠かさない。誰も声をかけてはくれない。むしろ、かけられないような何か強い気配が、理沙からは感じられた。それほど理沙は真剣な眼差しで、川を見つめ続けていた。
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