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ただ理沙だって好きな男性がいなかったわけではない。中学の頃みんなの憧れだったバレー部のキャプテンのことが、少し気になっていた。でも理沙は何も行動しなかった。それは、自分の慣習というゾーンを破って外へ出ていくことになるからだった、のかもしれない。そこまで突き動かされていたわけでもないらしかった。 九月も下旬に入り、気温もやや秋へ向かう。教室の中を廻る風が理沙の頬を弄ぶ。 今のクラスの仲間たちは割と理沙に対して友好的である。しかし理沙はなかなか心を開けない。今までの友達を大事にして、ずっと生活していきたいと思う。 しかし時に理沙はふと、その少ない友達の輪の中から自分が弾き出された気持ちになる。少し素っ気ない態度をされると不安になる。そんな時、もっとたくさんの友達を持っておけばよかったと思う。
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