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夢。
いつも見る悪夢ではない夢。
お社から聞こえた子供の泣き声。
親父の言い付けで子供の頃から、お社に油揚げと日本酒を備えるのが俺の務めだった。
普段なら人気の無い場所。お化けだと思い、逃げようとした。
『うぐっ、ひくっ。ま、待ってっ』
逃げようとした俺の服の裾を誰かが掴んだ。
「ぎゃああああ!!」
怖さ故に振り返る事が出来ず、走ろうともがく。
『うぐっ。逃げない・・で・・』
おそるおそる振り返ると、銀色の髪に紅い瞳、着物姿で狐の耳に尻尾を持つ少年が裾を掴んでいた。
瞳は涙でいっぱいで、また泣きそうな顔をしている。
「ひぃっ」
(お、お稲荷さん!?)
『ひくっ、ぐすん』
「ぼくになにか用なの?」
『さびしいんだっ、ずっと一人で』
「お母さんとか、お父さんとかは?」
お稲荷さんはふるふると首を横に振る。
「そうなんだ・・それは寂しいね・・」
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