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綺麗…だ。
僕は唖然としてしまった。
視線が…吸い込まれる様に彼女の顔を見つめて離れ無かった。
「お兄…ちゃん…?」
か細い声でわなわなと震えながら顔を覗き込まれたが、そんなのは眼中に入らなかった。
神々しい…。
運紗とは可愛さが全くと言って良い程逆のイメージだ。
サラサラと輝く黒髪、儚げだが芯のある瞳…きめ細かで綺麗な白い肌。
何処も僕好みとしか言い様の無い容姿だった。
「………チッ…」
突如運紗が小さく舌打ちをした。
「運紗…?」
聞き間違えかと思い、彼女から目を外さず声をかける。
「なぁに?」
しかし、何時もと何も変わらないふわふわボイスが聞こえて来た。
「………あの人の名前が、知りたい」
思わずそう言ってしまった。
正直に言うならば、名前だけでなく、出来るだけ多くの、彼女の総てを。
「…………」
運紗は何も言わず、黙りこんでしまった。
「運紗?」
「………お兄ちゃん…」
視線を移すと、運紗はうつ向いていた。
「ん?何だ??」
何時もより暗い声に困惑する。
「…お…兄ちゃん…は、椎名…さん、の事…好き、なの…?」
小さく途切れ途切れに図星をつかれる。
好…き…?なのか…?
確かに、動悸や熱りが…
「……よ…」
「よ?」
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