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「もしもし」
『海?どうした?』
「電車、乗り損ねた。悪いけど、学校まで乗せていって欲しいんだけど……」
『あんなに早くに出たのに?まぁ、いいけど。
今すぐ駅まで行くから、待ってて』
電話の相手は海の父親の悠木海人だ。県庁勤めの彼は車通勤している。高校と彼の職場は近くはないが最寄り駅は同じだ。
長男な所為か、昔から自立精神旺盛な海は甘えるのが苦手であまりこういったことで親の手を煩わせたくはなかったのだが、いたしかたない。入学式の日に遅刻するよりは、ましというものである。海は心の中で少女に恨み事の一つも言いたくなったが、お門違いだと思い、また、溜息を一つついた。
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