act.1

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 柔らかな春の陽射しが心地よい朝だったが、海からの風は冷たく悠木海は隣に座っている横山留加の肩を抱き寄せた。    県道沿いの、海岸線。堤防に座って海を見ながらのデートは、海と留加が付き合い始めた頃からの定番の場所となっている。  朝陽を浴びて、海面が眩い位に輝いている。海は、この田舎町が大嫌いだが、このキラキラと輝く海は正直嫌いじゃない。  海の生まれ育ったこの町は、豊富な自然だけが自慢の漁業が盛んな田舎町だ。人口密度は低く、過疎化が進んでいる。駅前の商店街は、開いている店よりもシャッターが下りている店の方が多くて、年々寂れていく一方だ。郊外に大型ショッピングセンターが出来たが、車がなければ行くのは難しく、海達中学生――否、今日から高校生だ――の身としては縁がない。    完全車社会の為か、交通機関の寂れっぷりもうら哀しいものがあり、海が今日から利用する最寄駅から出ているのは単線のローカル線で、それも普段は一時間に一本程度、通学時間帯でやっと三十分に一本程度だ。  こんな町では当然海たち世代が遊べるような場所は無く、その一時間に一本のローカル線に乗って県庁所在地のある市まで出るか――そこはいくらかは栄えている――今のように海を見ながら時間を潰すしかない。  平穏だが、刺激がなくて退屈……    海がこの町に抱く感想はその一言だ。 そして海は、この寂れた町と同じ位の退屈を、持て余していた。
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