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「今日から、別々の学校だね」
淋しそうに留加がそう呟くのを聞いて、海は留加を抱いていた手に力を籠めた。
「淋しい?」
意地悪く聞くと、留加はその丸い顔を益々丸くするように頬を膨らませた。海は少し微笑んで留加の頬にキスをすると、優しく頭を撫ぜた。
海と留加の付き合いは、中学二年の夏からで、一年半程になる。それは、恋人としての付き合いって事だけど。
家が近くて同い年の二人は、幼稚園の頃からの幼馴染だ。物心ついた頃から、留加は『うみちゃんはるかの初恋の相手』と公言して憚らなかった。
今更というか、やっとというか、留加が海に彼女にして欲しいと告白したのは中二の夏休みで、それ以来公認の仲となっている。
一度留加に、どうしてあの夏に今更告白しようと思ったのか、と海が尋ねてみると、『高校は絶対別々になると思ったから』という、理由が返ってきた。確かに、義務教育の中学とは違い、高校は学力に合わせて通う事になる。
学年でもトップクラスの成績だった海と、下から数えたほうが早かった留加とでは、同じ高校に行くのはほぼ不可能だっただろう。
事実、今日が高校の入学式の二人は、海は一時間以上かかる場所にある高校の制服に、留加は自転車で十分ほどの距離にある女子高校の制服に身を包んでいる。
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