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幼馴染という曖昧な関係のまま海と離れるのが不安だったんだって、頬を染めながら言う留加を、海はその時初めて可愛いと思ったが、彼女を幼馴染以上の存在として見る事は出来なかった。それでも告白を受け入れたのはなんとなくって部分が大きい。
留加は『子供の頃からの初恋が実った』と涙を流して喜んでいて、その後の付き合いも精力的だったが、海は常に淡々としていた。
キスも済ませたが、海は一年半にわたる付き合いの中で、留加に対して熱い感情の高ぶりを感じた事は無い。だがどういった形であれ、留加大切な存在であることは嘘偽りはなかった。だから、学校に行く前に逢いたいっていう留加の希望を叶え、早朝からわざわざ逢っているのだ。
海は留加を抱いていた腕を外し、彼女の顔を覗き込んだ。
「そろそろ、行く」
「もう?」
留加は不満そうに眉を寄せたが、自転車で十分の自分とは違い、海が通学に一時間以上かかる事を思えば、我慢するしかない。
「浮気、しちゃ駄目だよ」
「しないよ。
信用ないな」
微笑んで海が軽く口づけをすれば、やっと留加は機嫌を直しにっこりと笑った。
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