祇園

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晋作は、今日もむし暑い洛中をかけまわっていた。 きれあがった眼には、強烈な光がたぎっている。 そのころの彼は、幕府の使節にまぎれて上海にわたり、フランスやイギリスの国力を目の当たりにしてきたばかり。 建ち並ぶ洋館、ひしめく欧米の商船、清国とは名ばかりの、半植民地と化したかつての大国。 外国人の使用人さながらの、惨状。 欧米諸国の高度な文明を否がおうにも痛感させられた彼は、帰国後は過激な攘夷運動に身を投じていた。 そしてくたくたになりながらも、夜は祇園で仲間と酒を飲み、おおいに国事を論じる。 時には、取っ組み合い、つかみ合いへと発展する。
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